3/16(日)放映された「メルトダウン」シリーズ、今回は第4弾という事で
文字にしとく(聞き間違い等ご指摘ください)
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ナレーター:世界最悪レベルとなった東京電力福島第一原子力発電所の事故から三年。
―福島県双葉町上羽鳥
取材班:8.6、8.7、どんどん上がりますね。
ナレーター:
人々の暮らしを奪った大量の放射性物質がどのように放出されたのか、
今も明らかになっていません。
先月、取材班は原発から5km離れた場所で、一つの手掛かりを見つけました。
地震のあと止まっていたと思われていたモニタリングポスト、
事故直後の詳細な放射線量のデータが三年もの間、気づかれる事なく残っていたのです。
データを解析すると、新たな事実が浮かび上がりました。
地震の翌日から始まった放射性物質の大量放出。
新たなデータが示したのは、これまで考えられていたよりも早い時間帯に
高濃度の放射性物質が放出されていた事実でした。
何十もの壁で守られていた原発に思わぬ死角があったと専門家は指摘します。
東京海洋大学 刑部真弘教授(流体工学の専門家):
今まで思っていなかったようなパス(経路)が出来た。
専門家:恐らくこの(緊急時の)ベント操作なりで放射性物質が飛散したと。
ナレーター:
更に、放射性物質を封じ込める最も重要な機能がどのように失われたのか。
その詳細も明らかになってきました。
メルトダウンして溶け落ちた核燃料。
その膨大な熱で最後の砦、格納容器が破壊されていた可能性が浮かび上がってきたのです。
独自の科学的な検証から事故の原因を追究してきたシリーズ・メルトダウン
今回は、事故最大の謎、放射能大量放出の真相に迫ります。
―福島第一原発
取材デスク 吉田賢治:
原発事故から三年、福島県では今もおよそ13万5,000人もの人たちが故郷を追われ、
避難生活を送っています。
私が立っているこの場所も日中の立ち入りは出来ても、暮らす事は出来ません。
降り注いだ放射性物質の量が多かった地域は、復興に向けて動き出す事さえままなりません。
まるで時間が止まったかのようです。
多くの人々の暮らしを奪った放射性物質の大量放出。
さまざまな事故調査が行われてきましたが、
実は今も未解明の問題が数多くあり、検証は十分とは言えません。
事故を振り返ってみます。
震災発生の翌日、最も早く冷却機能が失われた1号機がメルトダウン、水素爆発を起こします。
続いて、二日後には3号機、三日後には2号機と、動いていた冷却装置が止まり、
やはりメルトダウンしました。
ここに、放射性物質の放出量のグラフを重ねます。
1号機と3号機の水素爆発の際に、短いピークが見られます。
しかし、最も多く継続的に放射性物質が放出したと見られるのは、爆発しなかった2号機です。
2号機で一体何が起きていたのか。
謎に包まれていた大量放出の真相が明らかになってきました。
ナレーター:原子炉が次々とメルトダウンし、建屋が水素爆発を起こした1号機と3号機。
しかし、最も事態が深刻だったのは、爆発を起こさなかった2号機でした。
格納容器から放射性物質を大量に放出した2号機、
配管の繋ぎ目や蓋の部分から漏れたとみられています。
残された汚染のデータを解析した画像です。
2号機からの放出は3月14日から15日に掛けて、
原発の北西部に高濃度の汚染をもたらしたあと、関東一円に広がりました。
大量放出の原因は何だったのか。
先月、1、2号機の中央制御室にカメラが入りました。
事故当時、津波によって全ての電源が失われ、真っ暗になったこの部屋。
運転員たちが手探りで事故対応に当たった跡が残されていました。
2号機の機器は、このレバーを使ったベントと呼ばれる緊急時の操作が
出来なかった為だとみられています。
ベントは格納容器を守り、放射性物質の大量放出を防ぐ最後の手段です。
原子炉の中でメルトダウンが始まると、その熱で格納容器の圧力が急激に高まり、
一気に破壊されるおそれがあります。
圧力を下げる為、内部の蒸気を抜くのがベントです。
水を潜らせて、放射性物質を取除いた上で放出します。
しかし、何故か2号機だけがこのベントが全く出来ない状況に陥ったのです。
現場で何が起きていたのか。
関係者への取材から当時の状況が明らかになってきました。
証言を元に映像化します。
―ドラマ(2号機中央制御室)
作業員A:RCIC(冷却装置)の運転状況の確認。
作業員B:了解
ナレーター:
3月14日、2号機の中央制御室。
地震発生から三日間動き続けていた非常用の冷却装置が停止しました。
作業員A:2号機中央制御室、原子炉水位はTAF(燃料上部)に達しました。
ナレーター:
午後1時25分、2号機の原子炉では核燃料を冷やす為の水が急速に失われ、
メルトダウンの危機が迫っていました。
当時、事故対応の指揮を執っていたのは、原子炉建屋から300m余り離れた免震重要棟です。
それまで、1号機と3号機の水素爆発の対応に追われていた免震棟。
2号機からの大量放出を防ぐ為、ベントの指示を出しました。
当時、現場で事故対応に当たっていた東京電力の元運転員が取材に応じました。
元東電運転員:
まずはその格納容器の保護ですかね。そこを第一に考えなきゃいけないので、
健全性を失わない為にも、保護する為にもベントは必要でしたね。
―ドラマ(3月14日 免震重要棟)
東電社員:ベントまだ出来ないの?
復旧班副班長:まだ出来ません
東電社員:電源復旧の見通しは?
情報班:余震などにより現場作業はなかなか進まない状況です。
ナレーター:全ての電源が失われた2号機中央制御室
―ドラマ(2号機中央制御室)
ナレーター:非常用の発電機を使いベントを試みていました。
ナレーター:しかし、格納容器の圧力は下がりません。
作業員A:ドライウェル圧力低下、確認出来ません。
作業員B:ベントは出来ているのか?
作業員A:AO弁を開にする空気圧が足らないと思います。
ナレーター:
現場が疑ったのは、ベントの際に開けなくてはならないAO弁と呼ばれるバルブでした。
このバブルは外から空気を送り込む事で開き、格納容器内部の圧力を抜く事が出来ます。
バルブを開ける為の空気が足りないのではないか。
バルブに空気が供給されているか確認する為、復旧班のメンバーが急遽現場に向かいました。
復旧班A:放射線量の状況は?
復旧班B:放射線量、現在高くありません。
復旧班A:急ごう。バルブに空気を供給するぞ。
ナレーター:
バルブは原子炉建屋の中にあります。
全ての電源を失う中、計器を確認する為には、直接現場に行くしかありません。
建屋の入口には、放射性物質を漏らさない為の二重の扉が備えられていました。
復旧班B:ここの放射線量、高くありません。
復旧班A:免震建屋に入域。
復旧班B:了解。
ナレーター:内部の状況が全く分からないまま、放射線量を確認しながら少しずつ進む復旧班
復旧班B:放射線量、変化なし。
復旧班A:開けよう。
復旧班B:了解。
ナレーター:
メルトダウンが迫る原子炉から僅か10mの距離。
バルブに空気を供給する為のボンベがある場所です。
復旧班B:
ベントのAO弁用空気ボンベ、確認します。ボンベの圧力異常なし。
AO弁に空気が供給出来ている模様。
復旧班C:免震棟に伝えましょう。
復旧班A:よし、戻ろう。
―免震重要棟
復旧班A:ベントのAO弁に空気が供給出来ています。今、原子炉建屋内の現場で確認しました。
復旧班B:現場の線量もまだ高くありません。
発電班副班長:(2号機中央制御室へ電話)
今、原子炉建屋内でAO弁の空気ボンベの残量現認出来ました。
2号機、ベントの状況はどうなってますか。
ナレーター:しかし・・・
作業員:2号機中央制御室でベント出来ていません。
発電班副班長:AO弁開操作するもドライウェル圧力下がりません。ベント実施出来てない模様。
情報班:すみません、ベントのバルブの系統構成です。
復旧班副班長:おかしい。ベントの弁が不具合を起こしてる可能性がある。
ナレーター:バルブ自体が故障しているとすれば、直ぐに直す手立てはありません。
復旧班:また空気の供給が必要です。
ナレーター:
ベントが出来ずにいる間にも原子炉の状態は悪化の一途を辿っていました。
メルトダウンによる熱で放射性物質を閉じ込める格納容器の圧力が上昇し始めていました。
発電班副班長:原子炉水位、依然ダウンスケールです。
発電班:
あと二時間で燃料が完全に溶融。
そして、その二時間後には、原子炉も損傷する。
そういう可能性がある非常に危険な状態です。
復旧班班長:ベントのラインナップもまだ出来てない。
復旧班副班長:もう一つのベントに空気を供給します。
ナレーター:
まだ最後の手段が残されていました。
故障したバルブ以外の予備のバルブです。
しかし、いずれも原子炉建屋の二重扉の内側にありました。
再び原子炉建屋に向かう復旧班。
しかし、事態は一変していたのです。
一瞬で数十mSvの被曝をするほどの高い放射線量
原子炉建屋は蒸気に包まれていました。
このあと、建屋の中での作業は一切出来なくなったのです。
当時、吉田所長の下で1号機から4号機の事故対応を指揮した福良昌敏さん。
2号機のベントが出来ない状況について、現場から報告を受けていました。
福良昌敏ユニット所長(当時):
早くその(ベントの為に)、いわゆる大弁なり小弁なりを開けなきゃいけないという事は、
まぁやる事はもう決まっていましたのでね。
やる事は決まっていて、且つその現場のほうではやるべき事をやろうとしてたわけですよ、実際に。
ですから、あれ2号は確かもう人が近づけなくなっちゃったんですね、バルブ自体にね。
ナレーター:
復旧班が原子炉建屋に入れなくなったのは、メルトダウンによって
大量の放射性物質が出始めていた時間帯です。
しかし、この段階では格納容器の圧力は、設計上の限界を大幅に超えていない為、
放射性物質が大量に漏れ出す事はないと考えられてきました。
何故、この段階で高い放射線量が計測されたのか。
国会や政府などさまざまな事故調査でもその原因は突き止められていません。
取材班は、原子炉のシミュレーションや原発の設備に詳しい専門家と共に探る事にしました。
専門家が注目したのは、格納容器そのものではなく、
これまで見過ごされてきた格納容器の外側にある設備です。
法政大学客員教授 宮野廣(原発メーカー元幹部):
〓軸路?〓がされないと、ここ圧力容器(原子炉)から出て来た蒸気は、
このタービンの外に出る可能性があると。
ナレーター:
疑われたのは、RCICと呼ばれる非常用の冷却装置。
電気がなくても蒸気でタービンを回して水を送り込み、原子炉を冷やす仕組みでした。
タービンには原子炉から蒸気が直接流れ込む為、そこから漏れる可能性があるというのです。
しかし、タービンの軸の部分は円盤形の四重のパッキンで厳重に塞がれていました。
RCICの軸から漏れる事があるのか、実際に確かめる事にしました。
取材班が入手したRCICの詳細な図面。
刑部真弘教授:この隙間が0.025
ナレーター:
流体工学の専門家と共に検証します。
図面を元に軸とパッキンの部分を実際のRCICと同じように再現しました。
その装置に蒸気を流し込みます。
パッキンに掛かる圧力を事故前と同じにします。
この状態では軸から蒸気が漏れる事はありません。
事故当時と同じ圧力に徐々に上げていきます。
すると、大量の蒸気が噴き出しました。
刑部真弘:
私が思っていたよりもですね、かなり多い値、
放射性物質ってのがかなり出て来た可能性はありますね。
ナレーター:
何故、漏れたのか。実はRCICには死角がありました。
元々パッキンとパッキンの間には、隙間が作ってあり、
圧力が高まって蒸気が漏れてきたとしても、ここから吸い出す仕組みになっていました。
しかし、蒸気を吸い出す為の装置は、電気がなくなると止まってしまいます。
こうした状態に陥るとRCICから一気に蒸気が漏れ出してしまうのです。
刑部真弘:一時間に50kgぐらいの蒸気が流れ出ている計算になります。
宮野廣:そんなに流れる?
刑部真弘:はい。
ナレーター:
漏れ出した蒸気の量からみると、建屋内部の放射線量が上昇しても
不思議ではないと専門家は指摘します。
宮野廣:
蒸気が出ると建屋の中が真っ白になっちゃう。
蒸気が出る体積って凄い量です。
だから真っ白になるから、それでそれが拡散して行くのは結構早いと思います、そういう意味では。
ナレーター:事故対応に当たった元運転員もRCICから漏れているとは思いもよらなかったと言います。
元東電運転員:
事故の当時は、そうですね、私はそこまで気が回らなかったですけども、
まっ、今見返せば、そこはリークする箇所の一つではあるなっていうのはありますね。
ナレーター:
ベントを阻んだ要因として、新たに浮かび上がったのは、
皮肉にも2号機を冷やし続けてきた安全装置からの漏洩でした。
建屋内の作業が出来ない中、事態は最悪の局面に近づいていました。
高まる圧力に格納容器が耐えられなくなっていました。
当時の免震棟でのやり取りを記録した内部資料です。
核燃料のメルトダウンが進み、格納容器内部の放射線量が上昇していく状況が
克明に記されていました。
2号機の冷却が止まり、危機に陥ってからおよそ11時間。
東電社員:炉心の状態は?
技術班:炉心損傷率は5%から7%に上昇。
保安班:格納容器内の放射線量も上昇。現在30Sv。
発電班副班長:格納容器、圧力なし。下がりません。
復旧班:機内のモニタリングポストの放射線量の上昇がしています。
ナレーター:
格納容器からの大量放出が現実味を帯びていました。そして、午前8時45分・・・
復旧班:
2号機、原子炉建屋から白い湯気が出ている事を確認。今、作業員たちが引き上げてきます。
復旧班班長:放射線量に変化は?
保安班:現在、正門付近で11,930μSv
ナレーター:今回の事故で最大の放射線量が原発敷地内で計測されました。
情報班:東京渋谷でも通常の2倍の放射線量を記録
技術班:東京でもかよ。
ナレーター:
2号機から白い蒸気が上がる様子を捉えた写真。
最後の砦、格納容器が破られ大量の放射性物質が放出された瞬間でした。
ベントが出来なかった2号機の格納容器は、有効な手立てを打てず、
封じ込めの機能を失っていったのです。
元東電運転員:
当然、その我々は最善を尽くそうって形で取組んでいましたけども、
最善がどんどんどんどんマイナスのほうになった、最善になってしまって、
だからこそ、こういう事象が起きたっていうふうには思っています。
要はその、やりたい事は幾らでもあったんですけども、やれる事が何もなくて、
その、無力感ていうんですか、凄く残念に思いますね、やはり。
ナレーター:
今も人々の帰還を阻む高濃度の放射能汚染。
格納容器に放射性物質を封じ込める事がいかに困難か、2号機が突き付けた重い現実です。
取材デスク 吉田賢治:
深刻な汚染を決定付けた2号機からの放射性物質の大量放出。
これまで目を向けてこなかった非常用の冷却装置が、いわば落とし穴になって、
ベントが出来なくなり、格納容器から直接漏れ出す事態を引き起こしていた恐れが出て来ました。
放射性物質を封じ込める最後の砦とされてきた格納容器。
どこが破損して漏れたのか、調査が行われていますが、
大量放出した2号機については、具体的に分かっていません。
調査で手掛かりが得られているのは1号機です。
ベントには成功しましたが、真っ先に冷却機能を失って一気にメルトダウンし、
格納容器が壊れて放射性物質が放出されました。
最新の調査結果を専門家と解析すると、格納容器の意外な弱点が浮かび上がってきました。
ナレーター:
放射性物質を封じ込める最後の砦、格納容器はどこが壊れたのか。
具体的な場所を探る調査が始まっています。
まず、調べるのは三つの原子炉の中で、最初に冷却機能を失いメルトダウンした1号機です。
格納容器周辺は放射線量が高い為、遠隔で操作するボートを使います。
このボートを汚染水が溜まっている格納容器の直ぐ外側に投入。
搭載したカメラで格納容器の損傷箇所を探ります。
そして、カメラが捉えたのは、格納容器周辺の配管から漏れ出す汚染水。
この奥のどこかに損傷箇所がある事を示しています。
映像を見た専門家は、流れ出す汚染水の量から、格納容器が予想よりも
深刻な状況にあるのではないかと指摘しました。
宮野廣:
どこかに穴が開いてる。
こちらが漏れてるのでないんであれば、ここじゃなくて、このどこかで。
ナレーター:
汚染水が漏れていた場所を辿ると、コンクリートに覆われた格納容器の下の部分に行き着きます。
そこは壊れにくいと考えられていた場所でした。
専門家と共に、更に詳細な分析を行う事にしました。
損傷が疑われる場所は、今直接確かめる事が出来ません。
入手した格納容器の図面とメルトダウンのシミュレーション結果を基に解析します。
原発の事故分析の専門家、内藤正則さん。
核燃料のメルトダウンがどのように進んでいったのか、データを基に探ってきました。
―エネルギー総合工学研究所
エネルギー総合工学研究所 内藤正則部員(事故分析の専門家):
口が開いてる部分があって、一カ所ね。
で、こっからこう出て来てると。
それで我々の計算だとね、この溶けた物は壁にはくっついていない。
ナレーター:
金属など鉱層物の耐久性を調査している専門家たちにも解析に加わってもらう事にしました。
シミュレーションでは、メルトダウンした核燃料は、原子炉の下のコンクリート部分に吹き出します。
溢れ出した核燃料は、格納容器の壁に向かって流れていきます。
しかし、壁からおよそ1mの所で止まりました。
直接触れていないにも拘わらず、壁が破壊される事はあるのか。
内藤正則:
これ2,000度超えるような高い温度ですから、
ドライウェル(格納容器)の壁はですね、輻射熱で温度が上がると。
温度が上がった時に、このドライウェルが構造的に持つかどうか。
ナレーター:
鋼鉄製の格納容器の厚さは24mm。
その周りを覆うコンクリートの形や材質などのデータも踏まえ、
核燃料から出る熱の影響を探ります。
すると、最後の砦とされてきた格納容器の思わぬ弱点が浮かび上がったのです。
2,000度超す核燃料の熱によって、格納容器の壁は600度近くまで上昇。
赤で示した格納容器の金属部分が外側に向かって膨張します。
外側のコンクリート部分には、一部材質が異なる場所があり、継ぎ目の部分に大きな力が掛かります。
そこが耐えきれず破壊されるという結果が出たのです。
構造解析の専門機関:
元々(ここまで)温度が高くなるような事を想定していない。
こういった炭素鋼とかの金属ですと、熱膨張が妨げられないなと。
内藤正則:
従来想定していなかった。
あまりにもデブリ(溶けた核燃料)がこのドライウェルの壁近くまでね、
アーッとこう出て来てしまったという、今回の事故のね、
そういったその事例では持たないという結論になりましたという事なんだね。
ナレーター:
これまで、燃えやすいのは配管の繋ぎ目や蓋の部分だとみられてきました。
今回の結果は、核燃料が壁に直接触れなくても、
その熱によって破壊されるという新たな弱点を示したのです。
事故の当事者である東京電力は、この結果をどう受け止めるのか。
東京電力 姉川尚史常務:
溶融炉心(溶けた核燃料)が、その格納容器に出れば、色んなとこに歪みを生じて、
その結果として、リークタイトでなくなる(漏れが生じる)可能性があります。
それはその通りだと思います。
そんな事も福島で大きな漏洩が起こった所について手立てをする。
それ以外についても、高温の溶融燃料が落ちて来た事によって劣化しそうな所に目配りして、
それをどうやって防ぐかって考える。
かなり高温に耐えるような材料を持ち込んで、カバーをするとか、
まぁやれる事は、まだまだあると思っていますので、
まっそういう対策をするんじゃないかなと思っています。
ナレーター:
水素爆発を起こした3号機、そして最も大量の放射性物質を放出した2号機の格納容器の調査は、
これからです。
取材デスク 吉田賢治:
原発の北西5km余り、福島県双葉町上羽鳥に来ています。
周辺に放射線量が高い場所がある為、立ち入りが厳しく制限されています。
このように防護服を着用します。
今回、私たちは原発の外でも放射性物質の放出の真相を知る上で、
貴重な手掛かりを見つけました。
放射線量を測定するモニタリングポストです。
実は、ここで記録されていたデータ、気づかれないまま三年の間眠っていたんです。
データを見ていきますと、1号機の水素爆発より前に、
かなりの放射性物質の放出があった事が分かりました。
これはちょうど1号機のベントのタイミングと重なっています。
浮かび上がってきたのは、今の原発の安全対策に警鐘を鳴らす新たな事実でした。
ナレーター:
三年間眠っていたモニタリングポストのデータ。
そこには、20秒置きの放射線量が地震発生から三日間に渡って記録されていました。
データを解析すると、これまで明らかになっていなかった深刻な放射能汚染の実態が
浮かび上がってきました。
地震発生から丸一日が経った3月12日午後2時40分、
急激に上昇した放射線量がピークに達しています。
1時間あたりおよそ4.6mSv、
この状態が続けば、一般の人の一年間の許容量を僅か15分で超えてしまう高い値です。
この放射線量が観測された頃、福島第一原発で何が起きていたのか。
午後2時1分、排気筒から出る白い煙、格納容器の圧力を抜く1号機のベントです。
その後、原発の敷地内でも放射線量が上昇していた事が分かりました。
元東電運転員:
やっぱり異常に高い値だったっていうのは覚えてますね。
もう振り切れちゃってる所もあればっていう、指示計がですね。
なんでもう、(建屋の)外の状況がもうどれだけ、ああ酷いもんなのかなっていうのは推測は出来ましたね。
ナレーター:
事故による放射性物質の広がりを研究してきた茅野正道さんです。
ベントが行われた午後2時に放射性物質が放出された場合、
どのように汚染が広がるか計算しました。
そのシミュレーションの結果です。
放出された放射性物質は北西に向かって移動し、上羽鳥を通過。
午後2時40分の放射線量は、上羽鳥で観測されたデータと一致しました。
日本原子力研究開発機構 茅野正道部門長(放射性物質の拡散の専門家):
今回も14時のベント開始から直ぐに放出が開始、放出がされてるという事が分かってくるわけで、
セシウムとか、そういった粒子状の物質ですね、
それがどれぐらいの割合かは分からないんですけども、そういった物が出てるというは確かです。
ナレーター:
しかし、1号機のベントの前、東京電力は放射性物質の放出は
問題ないレベルだと説明していました。
東電 小森明生常務(当時):
原子炉の下に水がありまして、そこを通してベントをすると。
放射性物質が仮にあったとしても、かなり低いレベルに抑えられるという手順を
まずは取っていきたい。
ナレーター:
ドーナツ型をした格納容器の下の部分には、ベントの際放射性物質の放出を抑える機能が備えられています。
サプチャンと呼ばれる圧力抑制室です。
貯められた水がフィルターの役割を果たします。
圧力を抜く際、蒸気を水に潜らせる事で放射性物質の量を0.1%、
1,000分の1にまで減らす事が出来るとされてきました。
一体何故、ベントによって高濃度の放射性物質が放出されたのか。
専門家と共にイタリアの巨大実験施設を訪ねました。
―イタリア ミラノ 実験施設SITE
ナレーター:
まずは、サプチャンがどのような仕組みで放射性物質の放出を0.1%にまで抑えるのか、
実験で確かめます。
サプチャンに見立てた高さ3mの水槽、上から伸びる配管で蒸気を送り込みます。
ミラノ工科大学 マルコ リコッティ教授(原子力工学の専門家):
こうした実験は、原発の安全性を考える上で非常に重要です。
ナレーター:
サプチャンの水温は低く保たれています。
格納容器から吹き込んできた高温の蒸気は泡となり、直ぐに消えてしまいます。
ハイスピードカメラで見てみます。
蒸気は冷やされると、一瞬で熱を奪われ水に変わります。
その為、泡が消えたように見えるのです。
格納容器からの蒸気が水に変わる瞬間、蒸気の中にあった放射性物質は水の中に捉えられます。
ところが事故当時、1号機のサプチャンでは異常事態が発生していたのではないかと専門家は指摘します。
エネルギー総合工学研究所 内藤正則部員(事故分析の専門家):
上の部分の温度が上がって、下の部分の温度が上がらないという温度成層化が現れるでしょう。
サプレッションプール(サプチャン)の温度はかなり上がっていたと考えられます。
ナレーター:
事故の際、サプチャンには格納容器とは別のラインから既に高温の蒸気が
流れ込んでいたと見られます。
その結果、温度成層化という現象が起き、
水の上の層が沸騰状態となっていた可能性が高いというのです。
成層化が起きると、サプチャンが放射性物質を取除く効果にどのような変化が現れるのか。
水を沸騰させ、先ほどと同じ量の蒸気を吹き込みます。
すると、様相が一変しました。
蒸気は大量の泡となって、そのまま水面まで上昇していきます。
蒸気の中に含まれていた放射性物質も水に取込まれる事なく、一緒に放出されてしまいます。
沸騰すると、およそ50%、半分も放出されてしまう可能性がある事が分かりました。
今回の事故は、大量放出を防ぐ最後の切り札とされてきたベントを検証する必要性を突き付けたのです。
事故の教訓は生かされているのか。
福島第一原発と同じタイプの原発を持つ電力6社にアンケート調査を行いました。
東京電力など3社は、新たに設置するフィルタ付のベントの装置で対応出来るとしています。
残る3社も新たな装置を取付けるとしていますが、詳しい性能については検討中、
または回答を控えるとしています。
しかし専門家は、今回明らかになった高い放射線量は、
サプチャンの水温上昇だけでは説明しきれない可能性もあると指摘します。
エネルギー総合工学研究所 内田俊介特任研究員(水中の化学物質の挙動の専門家):
あれほど汚い水、実際にはもう色んな物が入ってる水、こういう状態を想定して、
そういう(放射性物質の)挙動を考えていたんだろうかと。
ナレーター:
メルトダウンした原子炉では、さまざまな化学物質が発生しています。
その種類や量によっても放射性物質の放出量に違いが出るのではないかというのです。
事故の検証は十分なのか。
原発の安全対策を審査する原子力規制委員会に問いました。
原子力規制委員会 更田豊志委員:
安全を考える上で一番怖いのは、見落としがある事、欠けがある事、
で、但しどうしても欠けは必ずあって、(事故の)想定にしても十全になるように、
出来るだけの努力をしたつもりです。
しかしながら、そこで終わりではなくて、継続的な改善、
それから欠けを探す努力というのは、常に続けていかなきゃならない。
取材デスク 吉田賢治:
放射性物質の大量放出は、さまざまな弱点を突き、事前の予想や対策を超える形で起きていました。
放射性物質の封じ込めがいかに難しいか、
事故が起きて初めて分かる事がいかに沢山あるかを示しています。
更に、未だに解明されていない問題が多く残されているのも事実です。
事故のあと、原子力施設の新しい規制基準が作られ、
今、全国の48の原発の内、17の原発が原子力規制委員会の安全審査を受けています。
福島第一原発のような事故を二度と起こしてはいけません。
その為には、多くの課題を置き去りにしたまま、検証を止める事が決してあってはなりません。
事故の教訓が本当の意味で踏まえられているのか、
これ程の影響を及ぼした事故の検証が、まだ道半ばである事を忘れず、
問い続けていく事が求められています。
以上です。
真相に迫ってるわりには、中途半端な感じやったな。
確かに色んな実験して、専門家の指摘もあったけど、
400人を超す関係者への徹底取材したんやから、ほんまはもっと事実が明らかになるはず。
なんで嘘吐いたか、誰の命令やったんか、そういう真相にも迫って欲しかったな。
まぁ、NHKに期待してもムダかw
「事故の教訓が本当の意味で踏まえられているのか」
教訓は生かされてないのは確実やろ。
泉田知事がいつも指摘してる事をもっと重要視せなあかん。
免震重要棟がなかったら、もっと悲惨な事態になってた可能性はこれを見ても分かるはず。
2007年の新潟県中越地震の検証を踏まえ、泉田知事のおかげで教訓が生かされた。
柏崎刈羽原発の免震重要棟は、2010年1月に運用を開始、
福島の免震重要棟は、2010年7月に運用開始で、事故の8ヶ月前や。
泉田知事が強く要請してなかったら、どうなってたか?
そういう経緯もNHKは報道すべきやったんちゃうか?
もう「想定外」は通用せーへんで!
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