2012-09-13
NHKスペシャル『シリーズ東日本大震災 追跡 復興予算 19兆円』
2012/9/9(日)に放送されたNHKスペシャル『シリーズ東日本大震災 追跡 復興予算 19兆円』
ニュースでやってた動画 がれき処理費用 自治体間で10倍の差
そして、放送された動画 NHKスペシャル 東日本大震災「追跡 復興予算19兆円」
まだの方は、是非見て下さい!
復興予算が被災地以外の地域で使われてたとは驚愕です!
瓦礫処理についても、もっと突っ込んで取材して欲しかったけど、
実態が分かりやすく放送されてたんで、賛成派もちょっとは理解してくれたかも?
文字にしたけど、是非動画を☆
ナレーター:
これまでに投入される事が決まった復興予算は総額19兆円。
震災からの復興の為、増税などで確保された巨額の予算です。
しかし、この予算がどのように使われているのか、詳細はあまり知られていません。
その実態に迫る為、私たちは5万ページを超える資料を入手し検証しました。
予算は、それぞれの省庁に配分され、500を超える事業に使われていました。
専門家の協力を得て、事業の中身を分析。
被災地には直接投じられていない予算が次々と見つかりました。
(略)
このほかにも、反捕鯨団体への対策と調査捕鯨の支援の為、およそ23億円。
利用者の安全を確保する為として、国立競技場の補修に3億円余り。
被災地以外の対象とした事業は、分かっただけでも205事業。
2兆円を超える金額が計上されていました。
外務省参事官:どこまで広げてやるのかというのは、これは色々ご意見はあると思います。
経済産業省課長:ニーズと効果に応じて予算配分をされたものというふうに理解をしてございます。
ナレーター:その一方で必要としている被災地には十分に届いていません。
被災者:全然実感がないですね。悪いけども、そういった実感がないですね。
ナレーター:
被災地復興の為計上された19兆円。
巨額の復興予算を巡って、今、何が起こっているのか、その実態に迫ります。
─追跡 復興予算19兆円─
鎌田 靖:
津波に襲われ、建物が消えた市街地が、今もご覧のように広がっています。
震災から一年半を迎える宮城県石巻市です。
去年は復旧の年。
そして今年は復興元年と言われ、復興事業が目に見える形で本格的に進んでいるはずでした。
私は、震災直後から石巻市に通い続けています。
町中の瓦礫は確かにかたづけられてはいますが、町の再建、
そして、何よりも被災した人々の生活の再建が順調に進んでいるとはどうしても思えません。
この被災地の復興を支える為の予算。
震災発生から二ヶ月後の去年5月に、まず復興の第一歩となる瓦礫処理費用などとして、
第一次補正予算の4兆円。更に、二次補正予算の1.9兆円。
11月には、三次補正予算の9.2兆円。
そして、今年度予算の3.8兆円が、それぞれ計上されました。
併せておよそ19兆円。災害予算としては、かつてない規模の金額です。
この予算の財源の内、半分以上は所得税や法人税、それに個人住民税など、
私たちへの増税で賄われます。
特に所得税については、一律2.1%が上乗せされ、来年から25年間に渡って
私たちの新たな負担となります。
「被災地の復興の為であれば」と考えて、私たちの痛みを伴う増税に納得された方も
少なくないのではないでしょうか。
しかし、取材を進めると、その使い途があまり知られていないだけでなく、
被災地以外の所にも復興予算が投入されている実態が分かってきました。
今日は、震災からの復興を目指して投入された、この巨額の復興予算を徹底的に検証します。
まず私たちが注目したのは、復興予算の内、最も金額が多い第三次補正予算の9.2兆円です。
緊急的な一次、二次とは違い、生活再建の為の本格的な復興予算と位置づけられています。
9兆円という大枠が決められ、各省庁が復興の為として、
いわば競い合うように出してきた要求を積み上げて作られました。
この復興予算、どのように決まり、どのように使われているのか検証しました。
ナレーター:
被災地仙台から500km、岐阜県関市です。
国内最大手のコンタクトレンズメーカーの工場の一角で、
新しい製造ラインの建設が進められています。
この設備投資に投入されていたのが、国の復興予算でした。
コンタクトレンズメーカー 広報担当部長:
日本で流通しているコンタクトレンズは、海外のメーカーからの輸入超過という事もありまして、
私ども国内での生産というものを増産する事によって、
国内生産量のシェアを拡大していきたいと思っております。
ナレーター:
この企業に補助金を出したのは、三次補正で1.2兆円を確保した経済産業省。
所管する90を超す復興事業の内、最大の国内立地補助金(約3000億円)の中から投じられました。
成長分野の産業、そして被災地への波及効果、それが企業が利用する為の条件です。
コンタクトレンズメーカーは、波及効果として、
被災地における将来の雇用拡大の可能性を挙げました。
メーカーは仙台などに販売店や営業所を持っています。
岐阜の工場増設で生産量が増え売上げも伸びれば、
将来、仙台などの店の従業員を増やす可能性がある。
経済産業省は、この申請を認めました。
経済産業省が立地補助金を認可したのは、全国で510件に上ります。
被害が大きかった岩手、宮城、福島の3県は30件。
9割以上がほかの地域に投入されていました。
経済産業省 経済産業政策課 広瀬直課長:
これから数年掛けて事業を行っていくわけですから、
その中で具体的な取引とかいうものが被災地での関係でもどんどん出てくると。
被災地への経済効果そのもの自身を定量的に把握するというのは、
なかなかちょっと難しいんですけども、いずれにしましても、こうした500件超の事業をきちんと、
これは実行していき、そして効果が上がってくるという事によってですね、
日本経済全体の再生と、そして被災地の復興に大きな効果が出てくるものと期待してございます。
ナレーター:
なぜ、被災地以外で行われる事業に復興予算が使われているのか。
各省庁が予算要求の根拠としたのは、復興の基本方針。去年7月、政府が決定しました。
冒頭に掲げられた理念は、被災地域における社会経済の再生や
生活の再建に国の総力を挙げて取り組むという事です。
それと並んで記されていたのが、活力ある日本全体の再生、
この文言がある事で、被災地以外にも復興予算を投入する事が可能になったのです。
どれくらいの復興予算が被災地以外に投入されているのか、
私たちは専門家の協力を得て調べる事にしました。
神戸大学名誉教授、塩崎賢明さんは、かつて阪神淡路大震災の復興予算の使い途を検証、
東北で被災した復興計画にも携わってきました。
今回、私たちが手掛かりにしたのは、それぞれの省庁が作った復興予算の事業シートです。
三次補正予算の9.2兆円を分析しました。
事業数は488、それぞれ目的や金額が記されています。
神戸大学 名誉教授 塩崎賢明:
名称だけではなかなか東日本大震災と関連があるのかどうか、分からないのが結構ありますよね。
ナレーター:
このシートと担当省庁への取材を元に、それぞれの事業がどの地域を対象としたものか、
分類する事にしました。
赤い丸は被災地以外の地域、青い丸は被災地を含む全国。
無印が被災地のみに向けられたものです。赤丸、青丸の事業が次々と見つかりました。
塩崎教授:
低炭素社会を実現する超軽量…
これも現在の被災地に貢献するっていう感じじゃないですよね。
ナレーター:
経済産業省が15億9800万円を計上したこの事業(低炭素社会を実現する革新的融合)、
電気自動車の燃料電池の素材を開発する為の補助金です。
復興事業に位置づけた理由は、震災後、省エネや資源対策が課題になった事。
経済産業省所管の独立行政法人に公布されていました。
塩崎教授:被災地域における再犯防止施策の充実…
スタッフ:これは、北海道にある刑務所(月形)と川越の刑務所で職業訓練を行うというものですね。
塩崎教授:これちょっと被災地関連と言い難いですね。
ナレーター:
法務省のこの事業、『被災地域における再犯防止施策の充実・強化』
内容は刑務所で受刑者に行う職業訓練を拡大するというものです。
震災との関係について尋ねたところ、
瓦礫撤去など将来復興作業を担える人材を育成する為だと回答しました。
塩崎教授:14番の被災地域における治安確保 調査基盤の強化…
スタッフ:これはですね、公安調査庁のテロ対策って、これ書いてあるんですけど…
塩崎教授:被災地域と言ってるけど、実はそうなんですね。
ナレーター:
公安調査庁は、テロやスパイ対策を強化する為の予算を計上していました。
震災後、過激派が社会不安に乗じて勢力を拡大しているというのが理由で、
車14台などの購入に充てられました。
老朽化した国立競技場の補修費に3.3億円を計上したのは文部科学省。
利用者の安全確保が目的で、東日本大震災後の減災の考え方に適うとしています。
農林水産省は、反捕鯨団体の対策などに、22億8400万円。
南極で行われる調査捕鯨を安全に行う事が、
ひいては被災地の水産業の復旧支援に繋がると説明しました。
塩崎教授:
結構これ見ると、赤丸、青丸が多いですよね。
非常に膨大な復興の予算が要るんだと言って、増税もしながら集めてるわけですけども、
その使い途が一体被災者や被災地のところへ行くのかっていうような観点で見た場合に、
結構、首を傾げざるを得ないような、そんな内容になってますよね。
ナレーター:
三次補正で各省庁が積み上げた予算を調べた結果です。
被災地以外や全国を対象にした青や赤の事業は、総額で2兆4500億円に上っていました。
全体の4分の1にあたります。
更に取材を進めていくと、これまで別の予算で行われていた事業が
復興予算を使って行われるようになっていたケースも明らかになりました。
沖縄本島最北端、国頭村
海沿いの国道1.4kmに渡って工事が行われています。
防波堤や斜面を補強するこの工事、8年前から台風、大雨対策として
通常の道路予算で行われてきました。
その工事の費用の大半が今年度は復興予算から出ています。
地元住民:
やっぱり荒天の場合は波が荒いとかね、そういう時にはやっぱり波が覆い被さってくるっていう形で、
大雨とか、そういう時にはちょっと危険だっていう事で。落石はあったっていう事でね。
スタッフ:そのお金がですね、東日本大震災の復興のお金から出てるって、ご存知ですか?
住民:はっ?そ、そうなんですか?それをこっちで使ってるという事ですか?
スタッフ:国が。
住民:
国が?それは知らないですよ。復興は復興でちゃんと、あれ使って欲しいしね。
復興は復興の予算があると思いますんでね。それはまぁどうでしょうかね。
ちょっと、まぁ首を傾げたくなる事ではありますわね。
ナレーター:
復興予算を使う事が認められるのは、緊急性の高い大地震や津波への対策です。
この工事の目的は、昨年度まで台風・大雨対策、そこに今年度は地震対策という目的が追加され、
7億円の費用の内、5億円が復興予算から出ていました。
復興予算を使えるようにする為、地震対策という目的を加えたのではないか。
国土交通省に問いました。
国土交通省 道路局 河村英知 企画専門官:
台風対策をやっているというのは、これまでもやってたかもしれませんが、
今回は、あくまでも、その地震に備えたのり面防災対策、のり面対策として、
その全国防災対策として、まだ手当てされていない所で工事を実施したと。
地形的にも崩れやすい所は、当然地震が起こっても崩れますし、
そこは、三連動(地震)とか、そういうわけではないんですけども、
そこは全国として、それを教訓に地震対策として実施をするという事ですね。
ナレーター:
既に終了した事業とよく似たものが、復興予算で行われているケースもありました。
その一つ、外務省の青少年交流事業です。
宮城県南三陸町の沖合、7月、外国の若者たち100人が復旧した養殖場に向かっていました。
通称『キズナ強化プロジェクト』
被災地の今の姿を見て貰い、日本への理解を深めて貰おうというものです。
実は、震災前にもよく似た事業がありましたが、今年の3月に終了していました。
平成19年から5年間行われた東アジアとの青少年交流事業です。
その事業との違いは、交流の対象をアメリカなどにも広げ、
訪問先に、被災地での活動を2日間加えた事です。
残りの10日余りは、以前同様、京都や大阪での観光などに充てられています。
旅費や食費は、全額日本政府の負担。
年間1万人を招待する計画で、
復興予算からこの事業に72億4700万円が計上されています。
震災に絡めて終了した事業を継続させたのではないか、
外務省は、あくまでも別の事業だと説明しました。
外務省 アジア大洋州局 新美 潤 参事官:
外観から見れば、外国の青少年が日本に来ているという意味においては、変わりはないんですけども、
今回は、日本一般だけではなくて、震災、そして日本の復興、そして風評被害、
日本に対するイメージ改善という目的、政策目的に合った形のプログラムとして
今回のプロジェクト、予算を頂いたわけでして、
そう考えると被災地には当然行かないといけないし、
手法、アプローチは似ているけれども、政策目的は違うという事ではないかと思います。
ナレーター:
復興予算を分析した塩崎さん、被災地の現状を考えれば、
こうした使われ方が復興に影響を及ぼすのではないかと危惧しています。
塩崎教授:
赤丸付けたり、青丸付けたお金は、それ自身は大事な事だろうけども、
被災者の為、被災地の為にっていう旗印で枠取りしたお金ならば、
そこにもっと使われるようにすべきじゃないかっていうふうに思うんですよね。
結局、被災地や被災者っていうのが口実に使われて集められたお金が
必ずしも被災者にはいかない、被災地にはいかないっていう、
そういう構図になってると言えるんじゃないでしょうか。
鎌田:
今見てきた被災地以外での事業が必要のないものだというわけではありません。
しかし、各省庁がさまざまな理由を付けて予算を獲得しようとした事実。
そして、具体的に行われている事業の実態を見ますと、
私たちの税金が本当に被災地の復興に繋がるよう使われているのか、
疑念を抱かざるを得ません。
この予算について、担当者は、
「被災地には十分過ぎるほど予算を配分しているつもりだ。
しかし、ごく一部に復興との関係に疑問が生じる事業があるのは否めない。
限られた予算の中、今後は被災地の復興に向けた予算執行を更に厳密に行っていきたい」
と話しています。
多額の復興予算が被災地以外に使われている実態を見てきましたが、
では、その一方で今まさに支援が必要な被災地に復興予算が十分に届いているのでしょうか。
被災地に投入された復興予算の現状を取材しました。
ナレーター:
岩手県大槌町です。
津波によって町の中心部は壊滅的な被害を受けました。
この場所にも、かつては30軒の商店が建ち並び、賑わいを見せていました。
ここで飲食店を経営していた前川剛さんです。
5年前、借金をしてようやく開いた店を津波で失いました。
前川さん:もう一度やりたいですね、ほんとに。
ナレーター:
前川さんは、家も流された為、仮設住宅で暮らしています。
家族は7人、一日も早い店の再建を目指しています。
前川さん:これが実際出来上がった私たちの計画書です。
ナレーター:
前川さんが店の再建の為に利用しようとしたのが、国の『グループ補助金』と呼ばれる制度です。
制度を設けたのは19兆円の内、1兆8,796億円の事業を所管する経済産業省。
全国の企業に投じられた立地補助金に次ぐ2000億円が、グループ補助金に充てられています。
予算は被災の規模に応じて、各県に振り分けられています。
複数の事業者が集まって再建を目指すグループを結成、事業計画を策定し、県に申請します。
グループの再建が地域全体の復興に繋がると判断された場合、
経済産業省と県から再建費用の4分の3まで補助される仕組みです。
前川さんは、商店街の仲間と一緒に申請する事に決めました。
作成した計画書です。
商店街の再生は、地域の復興へ向けて大きな力になると強調しました。
人口流出に歯止めが掛からない大槌町も復興の柱と期待していました。
前川さんたちは、4カ月に渡って議論を重ね、申請にこぎ着けました。
しかし、その一週間後、前川さんたちへのグループ補助金の認定は見送られました。
報告 水上貴裕:
何故このような結果になったのか?
国は今年度、岩手県分として150億円を見込んでいました。
しかし、実際には929の事業者から併せて255億円の申請が殺到。
このため、岩手県は優先順位を付けざるを得ませんでした。
優先したのは、水産加工や建設業などのグループです。
再建すれば従業員などの雇用に加え、
関連産業への波及効果が大きいと期待したのです。
一方、商店街の再生は、町の復興には欠かせないものの、
短期的には大幅な雇用拡大などが見込みにくいと判断しました。
県は予算に限りがある為、即効性のある計画を優先せざるを得なかったのです。
岩手県 経営支援課 松川 章 総括課長:
とても現在の予算では間に合いませんという事で、国には要望しています。
やはり復興したいという意欲についても被災当初から感じておりましたので、
出来るだけそういう方たちの希望に沿えるように、予算が確保されればというふうに思っています。
ナレーター:
認定から漏れた事業者は、岩手、宮城、福島の3県で2,704(申請数4,525)
およそ60%の事業者が、この補助金を使えませんでした。
経済産業省は、制度立ち上げの段階で、
これほどのニーズがあるとは予想出来なかったとしています。
予算の増額を検討していますが、まだ具体的な事は決まっていません。
グループ補助金の認定が見送られた前川剛さんは、現在は石材店でアルバイトをしています。
収入は、震災前の半分以下、今は貯金を取り崩しての生活です。
これから家族をどう養っていけばいいのか、前川さんは追い詰められています。
前川さん:
正直、先が見えないっていうか、本当に首を吊る覚悟で借金しなきゃいけないです。
そうしてやらないとちょっと、出来ない状態ですよね。
ナレーター:
復興予算がなかなか被災地に届かない。
深刻な事態は、命を守る医療の現場でも起きています。
宮城県気仙沼市
震災前から医師の数は全国平均のおよそ半数、医師不足の町を津波が襲いました。
35あった医療機関の内、21の施設が大規模半壊以上の被害を受けました。
一年半が経った今も震災前と同じ規模まで復旧した施設は、僅か七つに留まっています。
気仙沼市で15年間、地域医療を支えてきた村岡正朗医師は、
診療所を津波で流されましたが、地元に留まる事にしました。
医療機関の不足に加え、不便な仮設住宅での暮らしを余儀なくされる被災者たち。
村岡さんは、一人一人の元に出向き診療を行っています。
─この女性は、目が見えず腎臓に重い持病を抱えています。
掛かり付けだった病院が津波で流され、今は村岡さんの訪問診療だけが頼りです。
村岡医師:
避難所でずっと救護所みたいなのをやってた時に、前の患者さんとか知り合いが来て、
先生、まだ居たんだよねって、出て行かんでねと言われたりなんかすると、
ああ、少なくとも俺の居る意味ってあんのかなと。
ナレーター:
厚生労働省の医療分野における復興予算で最も多いのが720億円の地域医療再構築事業。
しかし、これは中長期的な医療の復興を目的に使われています。
医療機関の緊急的な復旧に投じられたのが、およそ160億円の補助金です。
被災した医療施設の再建を支援する為のものです。
ところが、その対象は公立病院が中心で、民間の医療機関は一部に留まり、
補助率も低くなっています。
その為、村岡さんのような町の医師は大きな負担を抱えています。
今年5月、村岡さんは別の場所に土地を借り、診療所を再建しました。
再建費用は建物だけで9000万円掛かりました。
村岡さんの場合、市の委託を受け休日診療を行っていた為、補助の対象となりました。
しかし、受け取れるのは9000万円の内、およそ6分の1の1470万円。
しかもこの補助金は建物の再建にしか使えず、医療設備の購入費に充てる事は出来ません。
村岡医師:
最初は、そういうの(補助金)があるからって言ってたんでちょっと期待はしたんだけど、
もうそれを当てにしてたんでは、もうやってられんなと。ここに居て、(診療所を)残す為に、
地元に残すなり、維持させる為っていう事であれば、もう全く足りないような気がする。
ナレーター:
村岡さんは、新たに購入する機器をレントゲンなど外科の診療に欠かせない最低限のものに絞りました。
それでも掛かった設備費は5,000万円。
国が緊急的に投じた交付金500万円を使っても殆どが自己負担となりました。
震災前、診療所を補修したローンも残っていた為、借金の総額は2億円に上りました。
医師が多額の自己負担をしなければ再建出来ない為、
気仙沼市では6割を超える医療機関が元の規模に復旧出来ずにいます。
復旧予算が十分に届かない中、再建を諦め気仙沼を離れる医師も少なくありません。
その一人、東條達(さとる)さんです。
気仙沼で40年間、患者を診てきましたが、診療所は津波で全壊しました。
震災後、多額の資金を自己負担するのは難しいと再建を諦め、
今は県外の病院で勤務医として働いています。
東條医師:
それはもう本当に申し訳なく思っています。
患者さんを置きっぱなしにして、僕は生活出来るところに来ちゃったと。
でも、その健康と年齢からどの程度再建するにあたって、
経費が掛かるかという事を計算しますと、非常に難しいと。
ナレーター:
気仙沼市で診察を続ける村岡医師は、今多くの被災者から訪問診療の依頼が相次いでいます。
一ヶ月に行う訪問診療は120件以上。
残された医師が大きな負担を抱えながら、被災地の医療を支え続けています。
村岡医師:
半分ね、こういう田舎っていうのは、捨てられてんのかもしんないなって思う時がある。
もう費用対効果だけで。
鎌田:
地域の経済を支える中小の企業や商店、そして何よりも人々の命を守る地域の医療。
被災地復興の担い手となるべき一人一人に、復興予算が十分に届いていない現実が見えてきました。
それは被災地全体の復興が更に遠のく事に繋がるのです。
また、ご覧頂いたように、被災地以外では数々の事業が認められている一方で、
例えば、商店へのグループ補助金が予算の制約で認められなかったり、
民間の医療機関に十分な再建費用が届いていなかったりする現実を見ますと、
被災地の現状が理解されないまま予算が決められていったようにも思います。
復興予算の配分のあり方、そしてその優先順位が果たしてこのままで良いのか、
改めて検討する必要があるのではないでしょうか。
私たちは投入された復興予算を被災地がどう使っているのかにも目を向けました。
19兆円の内、復興の第一歩としていち早く投入された瓦礫の処理費用1兆円です。
この費用は自治体が国に請求し、ほぼ請求通り国から支払われています。
未曾有の災害による混乱で、十分なチェック態勢が取れない中、
被災地では、この予算の使い方を巡り、さまざまな問題が生じました。
何が被災地で起きているのか、自治体の試行錯誤を取材しました。
ナレーター:
震災で発生した3,121万トンの瓦礫、処理費用は全て国の予算で賄われています。
1兆円に上る巨額の予算は適切に使われているのか、
私たちは国や被災した自治体から、
瓦礫処理に関する資料を情報公開請求などで入手し調べました。
原発事故の影響が大きい福島を除く、岩手、宮城の自治体の費用を分析しました。
瓦礫1トン当たりどれだけの費用が掛かっているのか、自治体ごとの結果です。
自治体によって、費用に大きな差が出ている事が分かりました。
これを被害が大きく50万トン以上の瓦礫が発生した自治体に絞ります。
最も費用が高いのは宮城県石巻市、最も低い東松島市の実に7倍に上ります。
報告 鈴木隆平:
何故これほどの費用が掛かっているのか、その原因の一つに瓦礫の集め方がありました。
石巻市で発生した瓦礫は、被災した自治体で最も多い426万トン。
市が年間に処理するゴミの量の73年分にあたります。
3900人を超える犠牲者を出し、5万棟が被災した石巻市。
市役所が水に浸かるなど、混乱の中で瓦礫処理を進めていました。
復旧の為に、一刻も早い瓦礫の撤去が求められ、瓦礫を十分に分別する事なく集めていました。
今その大量の瓦礫から金属や木材を分別する為、機会や人手が必要になり、
多額の費用が掛かっています。
更に、分別を待つ瓦礫からは大量のハエが発生、薬品の散布も必要になりました。
瓦礫置き場の管理だけで、昨年度およそ40億円のコストが掛かっていました。
石巻市 災害廃棄物対策課 三浦智文 課長:
手間が掛かるのは間違いないので、その分の経費として上乗せされるっていうのは、
間違いないんでしょうね。
鈴木:
私たちが調査した27の自治体の中で、最も低く費用を抑えていたのが、宮城県東松島市でした。
石巻市の直ぐ隣に位置する東松島市、石巻市に匹敵する大量の瓦礫が発生しました。
市内の瓦礫置き場です。
作業員:結局こういう蛍光灯、電池、消化器とか、あと酸素ボンベ関係とか。
鈴木:
ここでは、金属や木材、タイヤなどが10種類以上に分けて置かれています。
瓦礫置き場に運ばれる前に、それぞれの現場で分別を済ませ、集められているからです。
瓦礫の山から分別する手間が省ける上、瓦礫置き場の管理に掛かる費用も
石巻市の8分の1に抑えられています。
東松島市建設業協会 橋本孝一会長:
とにかく最初から分別して入れる事が、一番金の掛からない方法です。
鈴木:
東松島市が早くから分別出来たのは、過去の苦い経験があったからです。
9年前に起きた震度6強の地震、この時分別を後回しにした事で、
処理費用は、当初の予想の1.5倍に膨れ上がりました。
この教訓が、今回の震災での費用の削減に繋がっていたのです。
東松島市 市民生活部 大友利雅部長:
(処理費用は)全国の皆さんがご負担してるというふうな事になりますんで、
我々は一円でも安くですね、
これらを終わらせる事が使命というふうに考えています。
鈴木:
瓦礫の処理費用が最も高かった石巻市、
入手した資料から取材を進めると、処理方法以外にも理由が浮かび上がってきました。
石巻市は、瓦礫の処理が間違いなく行われた事を確認する為、
現場で撮影した写真や作業員の名前が書かれた資料を提出するよう求めていました。
しかし、今その中に本当に作業をしたのか、
確認出来ない写真が相次いで見つかっています。
違う現場で行われた作業のはずなのに、
同じ写真が繰り返し使われているケース。
作業員の顔だけで、どこの現場か分からない写真。
作業した担当者の名前も書かれていないなど、
多数の業者が杜撰な報告をしていました。
何故こうした事が起きているのか、当時の状況をよく知る地元の建設会社の社長から話を聞きました。
この会社が経費を請求する為、市に提出した明細書です。
瓦礫処理を行う業者は写真と共に、重機や作業員の数を報告。
それに基づいて、経費を請求する仕組みでした。
当初、こうした請求や資料の内容を市が細かくチェックする事はなかったと言います。
地元建設会社社長:
あの時点において、チェック機能がきちんとなってるかってのは、人は足りないし、
役所の人間だって、もう現場に行かなきゃいけないし、そんなにそんなに出来ないと思うよ。
あくまでも業者側のモラルに任せてた部分はあるんでないの。
鈴木:更に取材を進めると、費用の水増しが疑われるケースがあったと
証言する人物に話を聞く事が出来ました。
ある現場の事情をよく知る男性です。
本来一週間ほどで終わる作業を引き延ばすよう指示されたと言います。
男性:
大体20日ぐらいですね。本来ならば、こういう建物に関しては大体一週間、掛かっても8日(で終わる)。
「あと一週間延ばしてくれ」って言うんですよ。
「えっ、どうやって延ばすんだ」っていう。
鈴木:本来の2倍以上、20日近く掛けて作業し、請求する事になったと言います。
男性:
そういう国から(お金が)出るんだから良いっていう考え方は、
ちょっと間違ってると思いますよ、私は。幾らなんでも。
鈴木:
私たちのその後の取材に対し、会社は不必要に作業期間を延ばした事はないと話しています。
瓦礫処理の予算は適正に使われたのか、
杜撰な報告が相次いで発覚した事を受け、
今石巻市は、改めて業者の請求のチェックを行っています。
石巻市 災害廃棄物対策課 三浦智文 課長:
正確なチェックだったり、或いはその不備を見つけて業者さんを指導するというふうな
暇もなかったですしね、まっ時間は掛かりますし、通常業務から手は割かれますけども、
これは、まぁ、欠かさざるを得ない仕事という事で行っております。
ナレーター:
限られた予算を無駄にしない。
瓦礫を抱える被災地で、ある自治体の取り組みが注目を集めています。
岩手県釜石市です。
どうすれば費用を最小限に抑えられるのか、釜石市は瓦礫を処理する前に
あるテスト事業を行っていました。
釜石市 廃棄物対策室 佐藤善広主任:
まず人の手で家具を撤去しています。
そのほかにも外せる…
ナレーター:
実際に被災した住宅を解体し、費用を検証したのです。
全て手作業の場合、初めから重機で解体する場合など、三つに分けて費用を計算。
その結果、家具などを室内から取り出し、重機で解体する方法が最も効率的で
費用も抑えられる事が分かりました。
この費用を基準に入札を行い、業者の不正を排除する取り組みも始めています。
こうした取り組みで、釜石市が処理に掛けた費用は東松島市に次いで、2番目に低くなりました。
釜石市 廃棄物対策室 佐藤善広主任:
実情に合った積算をしておけば、処理費の高騰には繋がらないのではないかと考えておりました。
適切に処理が出来れば、復興のほうにもお金が回っていくというふうに考えられますので、
それは市の職員としても一番重要な部分だと考えて事業を実施しております。
ナレーター:
復興の為、増税を含む国民の負担で賄われた多額の予算。
それをどう使うのか、被災地も問われています。
鎌田:
ご覧頂いた釜石市のように、入札制度を導入するなどして、
限られた予算を有効に使おうという取り組みは被災地で広がっています。
分別収集を徹底した東松島市の担当者が話していた
「全国の皆さんが負担しているので、一円でも安くする事が使命だ」という言葉。
それは被災地以外でも使われている復興予算19兆円の
その全てに貫かれていなければならない原則なのだと改めて思います。
これまで19兆円の復興予算を見てきましたが、
これも含めて国は震災から10年間の復興期間に併せて
23兆円の費用が見込まれるとしています。
19兆円の復興予算を巡って検証してきた問題、それがこれからも続くのか。
税金を納める私たちはきちんとチェックしていかなければなりません。
本当の意味で復興の為に予算が使われるのか。
最も苦しい状況に置かれている人々が、置き去りになるような事はないのか。
そして真の復興とは何なのか。
復興予算から見えてくる現実。
それはこの国が将来どういう社会であるべきなのかをも
私たちに問いかけて来ているのです。
─以上です。
もう、ツッコミどころ満載過ぎで、呆れるちゅうか、もう非常識過ぎて怒りがおさまらん!
国民の税金を盗んでる泥棒や!
確かに、中長期的な復興計画は必要やとは思う。
けど、今現在困ってる人たちがいっぱい居るのに、
それを各企業も「将来的に」と申請する事自体もあり得ん!
誰が見ても、被災地や被災者の為に使われてるとは思えんやろ!
マスゴミは、もっとこういう事を報道せーよ!
NHKは、ある程度検証はしてるけど、なんで鹿島JVについて触れれへんねん?
ちゅうか、作業を延ばせて指示した業者は徹底的に追究すべき!
「絆」とか「分かち合おう」て、なんじゃい?
官僚たちが、常に意図的に入れる「文言」のせいで、この復興予算は勿論、
瓦礫処理においても、上手に利用してる。
ほんまに、悪知恵働くクソ官僚ども!
こんな現状が明らかになって、テレビで報道されてても
被災地の為、被災者の為、復旧・復興の為言うて、確実に国民の税金が使われる。
なんでや?
誰も咎める事も、止める事も出来ひんのか?
国民がチェックしなければなりませんっちゅうて、チェックして発覚しても
どーする事も出来ひんのか?
強制的に税金をむしり取られて、強制的に被曝させられて
それでもボヤク事しかでけへんのか?
今、北九州市では、なんやらちゅうルールや規制やら言われて
追い出されて、肝心の市長は逃げて、市民がどんだけ訴えても強制排除される現実。
暴動が起こらんのが不思議なぐらい、他国民とは違う日本人らしい秩序?とやらで守られて?
悪人どもだけがデカイ顔して暴挙。
こんな日本でええのか?
どないしたら悪人どもを駆除出来るんやろか?
市民の事を第一に考える市長を急募!
府民の事を第一に考える知事を急募!
国民の事を第一に考える政治家を急募!
第一に考え、安心・安全に暮らせるようにしてくれるトップにだけ税金が支払われるべきやろ!
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 コメント:
コメントを投稿