2011-06-07

2011年6月6日(月)、MBS(毎日放送)ラジオ「たね蒔きジャーナル」小出裕章氏が出演

2011年6月6日(月)、MBS(毎日放送)ラジオ「たね蒔きジャーナル」に、
小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)が出演

6月6日 テルル132の検出が意味すること


DJ:福島第一原発事故で放出されました放射性物質の量について。
これまでの放射性物質の量を安全保安院が解析をしまして、
結果を今までとは違う数字を出してきました。
この数字が驚くべき事に、倍になってるんですね。
具体的に言いますと、37万テラベクレルと言っていたものを
77万テラベクレルに変えたということです。
この変わるというのは、どういう意味を持っていますか?

小出:元々、安全委員会は確か63万テラベクレルと言っていたと思いますし、
要するに、評価の仕方によって、
そんな数字は幾らでも変わってしまうということだと思います。

DJ:じゃあ、私たちは何を信じたらいいんですか?

小出:分かりませんけれども、私はもっとずっと多いと思います。

DJ:それはどうした根拠からでしょうか?

小出:例えば、海に流出している放射性物質は、
殆どまだ何も分からないまま、流れていってしまっていると思います。

DJ:そういったものも加算されての数字では、今のところないんですね?

小出:今回、多分保安院が出したのは、
海へ出たものを加算したものだと思いますけれども、
多分、保安院のものは、また過小評価だと私は思います。

DJ:しかしながら、こないだ出ていました37万テラベクレルという数字は、
これを元にして、この事故はチェルノブイリと並ぶレベル7だというふうに
言われた根拠となった数字ではないんですか?

小出:勿論、そうです。

DJ:ということは、もうこれ以上ないというような、私なんか素人から
思いますとね、最悪の数字だったわけですよ。
それが、いとも簡単に倍になり、あるいは小出先生はもっと多いのではないかと
仰る。チェルノブイリに比べて、そんなに大きな事に今なってるんですか?

小出:チェルノブイリは、もっとずっと多かったです。
37万よりは、多分一桁多かったと思います。

DJ:放射性物質の量は、チェルノブイリのほうがもっと多いんですか?
確か、10分の1でしたよね?

小出:はい。ですから、チェルノブイリに益々近づいているということです。

DJ:じゃ、チェルノブイリの10分の1にしか過ぎないと思っていたら
この数字は、これから変わるやもしれないということですか?

小出:勿論です。ですから私は、初めからチェルノブイリは
一応収束しているけれども、福島原発の事故は現在進行中ですので、
どんどんチェルノブイリに近づくし、それを超えてしまうかもしれない
いうふうに、皆さんにお伝えしてきたつもりでした。

DJ:海洋汚染の放射線量は、まだ分からないんですよね?

小出:そうです。

DJ:当初10日間で、4カ所測定しているという発表が
今になって分かったんでけども、今は、政府は海洋調査ポイントというのは
公表してるんですか?

小出:私自身は見たことがなくて、散発的にデータは出てきていますけども
本当にもし、やる気があれば、もっと測定ポイントを強化して、
あるいは、海岸線沿いの海藻の汚染を調べるということで
かなりのデータが取れると思うのですけども、
そのデータも私は見たことがありません。

DJ:未だに、取るべきデータが取られていないのか、
取っているけれども、出していないのか。

小出:どちらかだと思います。

DJ:どちらでも許せませんけど。
それから、データの一つで、放射性物質「テルル132」というものが
検出されたんですが、これはどんなもんなんですか?

小出:それは、ヨウ素132という、私たちが注目している放射性物質の
親隠しというもので、ヨウ素132自身は、ものすごく寿命が短いのですが、
テルル132というものが出てきてしまいますと、
それから常に、ヨウ素132が産み出されてきてしまうということで、
テルル132を見ていないと、ヨウ素132の挙動が分からないという、
そういう特殊な放射性核種です。

DJ:ヨウ素の元みたいなもんですか?

小出:そうです。

DJ:今の話ですと、水素爆発の前に、もう検出されていたという事ですが、
これは何を示しますか?

小出:燃料棒の被覆管というものが、破れない限りテルルは出てこない。
ですから、事故のごくごく初期に、燃料棒の被覆管が破損をしてしまっていた
ということを示しています。

DJ:報道によると、1000度を超えてたんじゃないかと。

小出:そうです。1000度と言ってもいいですし、私は850度だと思うのですが
ジルコニウムという被覆管の合金が、水と反応する温度が850度あるいは900度と
言われてきました。ですからもう、事故の本当の初期の段階で、
その温度に達してしまって、被覆管がもう壊れてしまったということを
示しています。

DJ:なんで、その情報が今頃出るんですか?

小出:本当に不思議です。

DJ:保安院の西山審議官が「情報を整理して公表する発想がなかった」
言って今回、いわゆる修正に当たって、弁明しているんですけど
驚くべきコメントですよね。
保安院は、それが仕事ですよね?

小出:それこそ、やらなければいけない一番の仕事だと思います。

DJ:もし、テルル132が検出されていることを事故直後に公表していたならば
避難する皆さんに対する色々なコメントなども変わったというふうに
思われますか?

小出:勿論そうです。ごくごく初期の段階で、
燃料の破損が始まっているということが分かっているわけですから
今聞いていただいたように、テルルが出てくるということは
ヨウ素も出てきてるということですので、
早急に子供たちには、ヨード剤を飲ませなければいけないし、
住民に対しての防護措置というのが、本来ではなされなければ
いけなかったと思います。

DJ:このテルルというものの存在によって、もっと早急に避難する方々の
安全を図るためにやれることは、実際にあったわけですよね?

小出:勿論です。私がもしその現場に居れば、そうしたと思います。

DJ:この発表しなかったというのは、非常に意味が大きいじゃないですか。

小出:発想がなかったと言われてしまうと、「そうか、はい」と言うしか
ありませんし、呆れるしかありません。

DJ:事故の翌日3月12日の枝野官房長官の夕方の会見をですね
今日、見直したんですよ。そしたら「放射能はきちっと測定されておりまして、
放射性物質の把握に努めて、周囲の皆さんの安全については、
万全を期しているところでございます。万全を期して、いざというときのために、
ヨウ素剤も用意しています。」って仰っているんです。
でももう既に、ヨウ素剤を皆さんの体の中に入れてもらっておかなければ
いけない段階だったんですね?

小出:本当ならば、そうだったと思います。

DJ:情報が遅れるって、こういうことを引く起こすんですね。
時系列で言うと、3月12日午前8時半に、この物質を検出して
その日の午後6時半に20キロ(避難区域)に拡大しているんですよね。
いわゆる10時間ぐらいあるんですけど、この間に取るべき処置というのは
今先生が仰られたように考えられるわけですよね?

小出:そうです。

DJ:これはもう、明らかに政府が分かって20キロに拡大したんじゃないかと
これを隠したまま、考えてしまうんですけども、
そういう意図も考えられますよね?

小出:私はそうだと思います。ずっとお伝えしてきましたけど、
今の政府というのは、事故の規模を小さく見せたい、小さく見せたいと
いうふうに、行動してきたように、私には見えます。
本来、防災の原則というのは、最悪の事態を考えて対処しなければいけない。
ヨード剤は、飲ませるときを逃したら、もう全く意味がないわけですから
もっと迅速にやらなければいけなかったんだと思います。

DJ:プルトニウムが検出されたという話。
原発から1.7キロ離れた土から出たと、ある研究者の方の発表です。
プルトニウムについては、以前にも検出されたという話が出たんですが
そのときは、文部科学省の調査で、
「検出されてるけれども、過去の核実験によるものである」
いうふうにされたんですね。
研究者の方が
「核実験じゃなくて、今回の事故が原因でのプルトニウムではないか」と
仰っているんですが、小出先生の見解はいかがですか?

小出:詳細は、私は承知しておりませんけれども、多分プルトニウムを
検出したと仰ってる方は、私の知り合いだと思いますし。

DJ:山本教授とおっしゃいます。

小出:日本でのプルトニウム測定の第一人者ですので、
山本さんが言うのであれば、私は確かだと思います。

DJ:プルトニウムが検出されることの意味を教えていただけますか?

小出:プルトニウムというのは、
なかなか核燃料の被膜からは出にくい放射性物質なのです。
ウランもそうですけれども、そういう燃料の中から出にくい物までが、
既に環境に出てくるほど、自体が悪化しているということだと思います。

DJ:出にくい物というと、プルトニウムが出てたのは、
よほど核燃料が損傷しているという意味ですか?

小出:そうです。そういう意味です。

DJ:プルトニウムの人体への悪性というものは、どうなんでしょう?

小出:人間が遭遇したうちで、最も毒性の高い物質だと思っていただければ
いいと思います。
100万分の1グラムを吸い込んだら、その人は癌で死ぬという、そのぐらいです。

DJ:100万分の1を吸い込んだら死亡するというぐらいの恐ろしい物体なんですね。

小出:そうです。

DJ:これを国としては「過去の核実験のものだ」というふうに
言っているということについては、どんな感想を持たれますか?

小出:過去の大気圏内、核実験というのは、大変な犯罪的なことをしたわけで
大量のプルトニウムを大気中にばらまいたという、そういう時代が
60年代にあったので、それ自身がとてつもないことだったわけで
地球上は、殆どプルトニウムで既に汚染されています。
その上に、今回また福島の原発の事故があって、
福島原発の周辺がプルトニウムで、さらに汚染されたということなっている。
残念なことだと思っています。



【福島原発】総放出量37万テラベクレル⇒77万テラベクレルに修正

より書き起こし(倒置、ケバ取りあり)

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