6月7日 格納容器の底は抜けている 小出裕章氏(京大原子炉実験所助教)
メルトスルー(原子炉貫通) 政府が公式に認める
DJ:小出先生が最初から問題にしてらっしゃった汚染水について。
福島第一原子力発電所で、溜まり続けている放射能汚染された水を
どうするかというのが大問題なわけですけれども、
いよいよもう溢れ出すんだという危機的なラインが迫っている。
それに合わせて、なんとか汚染水をきれいにする浄化する装置を
急ピッチで作っていて、15日頃に完成すると、東電は言っています。
これはどのぐらい期待していいものでしょうか?
小出:期待したいですけれども、これまでも東電がやってきた対策は
期待どおりに動かなかったってことは、山ほどありますので
なかなか難しいかもしれないと思います。
DJ:これは設計上は、という言葉が付いての数字なんですが、
うまくいきますと、上澄みの液の放射能の濃度が現在のものよりも
1000分の1、あるいは1万分の1まで薄まるんだということなんだそうです。
そう聞くと、とてもとても薄まるような感じはするんですが、
元々の濃度が高いんでしょうから、薄まったとして
どれくらい危険なものなんでしょうか?
小出:元々が猛烈な濃度ですので仮に1000分の1、万分の1になったとしても
例えば環境に放出できるかと言えば、勿論できない。
DJ:私はもうこれで海に流れてもいいものになるのだと
勝手に思っておりました。
そういう濃度にまで薄まるわけではないんですか?
小出:はい。福島の発電所の敷地内に中にある放射性の汚染水というのも
ものすごい汚染水から少しは汚染の低いものまでありますので
一番低いものに関しては、万分の1になれば流してもいい濃度が
できるかもしれませんけれども、問題はものすごい濃度の汚染水を
なんとかしなければいけないということなわけですから
そういうものを1000分の1、万分の1にしたとしても、
まだまだ環境に出せる濃度にはならないと思います。
DJ:何分の1にしたら環境に流せる?
小出:高濃度の汚染水に関しては、10万分の1、100万分の1にしなければ、
環境には出せないと思います。
DJ:例えば、100万分の1にできるというようなシステムというのは?
小出:ないです。
DJ:よその場所にもないんですか?
小出:はい。要するに、技術的な処置をしようとしているわけですけれども
技術的な処置というのは、100あったものを100全部捕まえることは
元々できないので、99を捕まえる、99.9を捕まえる。あるいは
99.99を捕まえるということは、順番にできますけれども、
全部捕まえるということは、勿論できませんし、
元々が猛烈な高濃度である場合には、捕まえれば捕まえるだけ、装置のほうが
駄目になってきてしまって、性能が益々出なくなるということに
なりますので、大変難しいと思います。
DJ:装置も使えば、高濃度に汚染されるわけですよね?
小出:勿論、装置も汚染されますし、多分今度はゼオライトとか
バーミキュライトとかいう粘土鉱物を使うんだと思いますけれども、
すぐにもう性能が劣化して使えなくなります。
DJ:ゼオライトという軽石のような物質に放射性セシウムを
吸い取らせるというシステムなんですよね?
これ一回使ったら、そのゼオライトはずっと使えないわけですか?
小出:そうです。あるところまでセシウムを捕まえてしまいますと、
そのゼオライトは、セシウムでいっぱいになってしまって、
もう使えなくなります。
DJ:大量に、このシステムを使っては、次のシステム、次の装置と
大量に作り続けなきゃいけないんですか?
小出:そうです。次から次へと取り替えなければいけませんし、
ゼオライトに、ものすごく高濃度のセシウムが付きますので
それに今度近づくことすら難しくなります。
DJ:使い終わったこのシステムで、人が被曝するおそれがあるわけですね?
小出:そうです。必ず被曝します。
DJ:ひとたびシステムができ上がれば、どんどん浄化できるのかなんて
思ったんですけれども、そんな甘いもんではないんですね。
小出:残念ながら、そうではありません。
DJ:先生がかねて指摘されている周囲の地下水への汚染を防ぐためにも
土木工学的にも、コンクリートブロックを築くべきだいうことを
仰っていたような気がするんですけれど、これも全く手つかずですよね。
これは早くやるべきだと思うんですけども、どうでしょうか?
小出:私がコンクリートの壁を作るべきだと言ったのは、
既に炉心がメルトダウンをしてしまって、
地下に潜っていってしまっているとすると
もう冷却自身ができませんので、今までのように外から水を入れて
汚染水を溢れさせるというよりは、壁を作って地下水の汚染を防ぐという
ほうがいいのではないかと、そういう提案をしたのです。
ただ、その作業をするためにも、今ある汚染水をまずはなんとか
しなければいけない。
その汚染水が溢れている状況では、どのような作業も難しい。
DJ:今、汚染水については、浄化装置が間に合うかどうかと
いう言い方をする人が多いと思うんですね。
溢れ出す前に間に合えばいいんだと。
それが15日頃でどうだろうかという注目の仕方をしている方も
多いと思うんですが。小出先生の推測であれば
もう間に合う間に合わないの話ではなく、既に目に見えないところで
汚染水は海や地下に流れていっているという。
小出:それは確実ですね。
もうそれは、皆さんお分かりいただけると思うけれども、
コンクリートは、そこらじゅうで割れていますので、
今の福島でも、そこらじゅうから地下に流れて行って、
海にも行っていると思います。
早く汚染水をタービン建屋、原子炉建屋、あるいはトレンチ、立坑、ピット
というところから、汲み出さなければいけない。
DJ:問題の論点はそこなんですよね。
小出:そうです。
DJ:15日に間に合うのかしらって、そういう悠長なことではないと
いうことを肝に銘じなきゃいけないですね。
小出:はい。
DJ:政府がIAEA国際原子力機関に報告する文書の中で
「メルトダウンではなく、メルトスルーしていた」
メルトスルーって、原子炉貫通と言うんですか?
小出:そうですね。溶けて貫通してしまったということですね。
DJ:メルトダウンでなくメルトスルーしていたと公式に認めるということを
どう感じられますか?
小出:私は、元々は東京電力の公表データを信用して、炉心の半分は
まだ形があるというふうに、皆さんにお伝えしてきたのですけれども
5月12日以降は、東京電力自身が、炉心が全部溶けてしまってると
言い出したのですね。炉心が全部溶けてしまったと認めるのであれば
要するにメルトダウンなのですが、原子炉圧力容器が溶けることも
極めて高い確率で起こるでしょうし、それが溶けてしまえば
原子炉格納容器も溶けて穴が開いてしまうと。
それを私たちはメルトスルーと言ってるんです。
それを日本の政府も認めるようになったということですね。
DJ:小出先生は、もうメルトスルーであろうということを早くから
おそれを指摘してらっしゃったんですが、
今回の報告書なんかでは、
「圧力容器の底にあるとされていた核燃料が、底から溶融した核燃料も
漏れだして、格納容器の中に堆積している可能性がある」と
書かれています。だから圧力容器の底は貫いてしまったけれども、
格納容器の中にはまだあるという表現だと思うんです。
これでいいんですか?
小出:それは技術的には、とても判断が難しいところで、
格納容器の中にどれだけ水が残っているかということで
格納容器の、いわゆる鋼鉄の底が抜けてしまうかどうかということに
関係してくると思います。
でも私は、水があったとしても、2800度ではなければ溶けないような
ウランの燃料部分が、圧力容器に穴を開けて、格納容器の底に
漏れているのだとすれば、多分水があっても、格納容器の底は
溶けて穴が開くと思います。
DJ:確か圧力容器と格納容器の分厚さが違うと仰いましたね?
小出:圧力容器は、16センチありますし、格納容器は多分3センチぐらい
だと思います。
DJ:同じ鋼鉄で、厚さは格納容器のほうが3センチと薄いんですよね?
小出:そうです。
DJ:ここにちゃんと堆積して残っていると言われても、
それはどうなんだろうという。
小出:多分、そういう状況はないと思います。
DJ:そこのところは、まだ政府は認めていないんですよ。
そうしますと、認めるか認めないかで、また対処の策が変わるんじゃ
ないかと思うんですね。それが遅れに繋がりはしないかと思うんですが?
小出:そうなんです。
もし格納容器の底が抜けていないのだとすれば、
まだ循環式の冷却回路という可能性はあります。
勿論、循環式の冷却システムをこれから作らなければいけないのですけど
それを作れば、まだ乗り越えられる可能性があるのですが、
格納容器の底がもう抜けてしまっているというのであれば、
冷却回路はもう成り立ちません。
あとは、壁を作って地下水の汚染を防ぐという
それ以外には、多分ないと思います。
DJ:堆積している核燃料の温度は、推測はつかないのですか?
小出:今の段階では、つかないと思います。
要するに計測器自身が、殆ど死んでしまっていて、正確な情報が
得られないという状況になっているわけです。
炉心の水自身がどこまであるかっていうのが、分からない。
格納容器の中の放射線量率というものは、ものすごく参考になる
データだったんですけれども、元々それで東京電力は炉心の
どれだけが壊れているかということの推定するための一番重要な
根拠にしてきて、まだ7割しか壊れていない。あるいは55%しか
壊れていないと言っていたのですけれども、
一気に全部が壊れちゃったと言い出すわけですし
信頼できる計測データがもう既にないという状況に陥ってるわけです。
その容器がどういう状況になっているかというのは
とても判断は難しいと思いますが
私は原子炉建屋の地下に、大量に水が既にもう漏れていっているということを
見ると、多分格納容器は底が抜けていると思います。
これ以上、海を汚すな!(`エ´)ピャー
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